ライトノベル批評『この素晴らしい世界に祝福を! 17』

[暁 なつめ, 三嶋 くろね]のこの素晴らしい世界に祝福を!17 この冒険者たちに祝福を! (角川スニーカー文庫)

 

 

 この素晴らしい世界に祝福を!堂々完結!今やスニーカー文庫の看板作品であり、

900万部突破とライトノベル界でもビッグタイトルとなった「このすば」も遂に完結です。何のチート能力もなければ、問題児だらけの仲間たちを率いて異世界生活を送る主人公カズマの緩い物語が終わるのは個人的に寂しくもあります。ただ惰性でひっぱらず、しっかりと魔王退治という当初の目的に着地した暁なつめ先生は流石です。あとがきでも書かれためぐみんとの今後、魔王の娘の行く末、アリスやアクセルの冒険者たちの奮闘などまだまだ「このすば」期待せずにはいられません。

 

さて本巻ですが、序盤カズマたちはエクスプロージョンに連発により、結界を破壊して魔王城に乗り込むことに成功します。しかしここで思いがけないアクシデントが発生。

なんと今まで数多の魔王軍幹部を倒してきためぐみんの体調に異変があります。エクスプロージョンの連発により体に負荷がかかり、鼻から出血してしまいます。正直筆者としてはシリアス展開に焦りました。作品一番の人気キャラのめぐみんなので死ぬことはないと思っていましたが、最後にめぐみんの一発で倒すことが多かったので魔王をどう倒すのか、気になります。

 魔王城に侵入したカズマはミツルギやゆんゆんと合流してアクアの探索を開始します。ここで個人で別れるわけです。ここまでシリアス展開、いつものと違う緊張感。

まさか各々魔王軍と一体一での戦闘かっ! と思いきや明らかに罠とわかるボタンを見つけ、深読みしてそれを押すカズマ。飛ばされた先に当たり前のようにいるアクア。

そういつもの馬鹿馬鹿しくなるコメディ展開に著者は思わずにやついてしまいました。これでこそ「このすば」です。そこからはいつものカズマとアクアの丁々発止の掛け合いです。ところどころカズマの新しいスキルによる戦闘を挟みますが、かっこいいカズマさんなんて筆者は興味ありません笑

 なんやかんやで全員合流して魔王の部屋の前までたどり着いたカズマ一行。ここでアクアがビビりだして帰ろうと提案します。さすがわれらが駄女神。勇者もののコメディ作品の先駆者魔法陣グルグルを彷彿とさせるまさかの提案。しかしグルグルでは本当に魔王と戦わずに帰ったのですが、カズマたちはなぜか真面目に戦うことになります。

しかしここからが本領発揮です。ダクネスの大活躍です。扉から入った瞬間、容赦なく放たれた魔法をカズマの想定以上の耐久力で難なく耐えきります。ここからのダクネスは本当にチートです。魔王や側近からの攻撃も耐えきります。ミツルギがボロボロに生き絶え絶えになっているにもかかわらずです。正直この戦闘はもちろん、本巻の笑いどころはダクネスによるところが大きくMVPの活躍だと思います。硬すぎです!それこそ魔王がビビるほどに笑

 十分笑わせてくれたところでカズマの策がはまり、ダンジョンにテレポートするカズマと魔王。珍しく一騎打ちで戦闘するカズマ。そしてここまでいいところなしの魔王ですので予定調和のラッキーで活と思いきや、そうは問屋が卸さない。腐っても魔王です。アクアの力で弱体化していてもカズマを圧倒する肉弾戦と魔法。そしてカズマと同等の頭の回転の速さ。正直カズマが新しく覚えた技が上手くはまって倒せると思っていたのにまさかのシーソーゲーム展開。どうやって終わるのか、と思いきやまさかの爆裂魔法です!この展開は燃えました。そして大好きなあの子のそばで見ていたから覚えらえたというセリフはちょっとグッときましたね。

 晴れて魔王を倒したカズマですが、相打ちで女神エリスのもとへ。魔王を倒したのでアクアも天界に戻ってくることができました。しかしそれはカズマとの別れを意味し、アクアは涙をこらえきれません。すごくしおらしいアクアにカズマもきゅんとなってしまいます。そして異世界での生活と褒美のチート能力に女神を連れていくことを選択するカズマ。ちょろいちょろいとめぐみんダクネスに言うカズマですが、お前が一番ちょろいと思ったのは筆者だけではないはず!まあしっかりとオチをつけてくるあたり流石ですが笑。

 冒頭でもいた通り物語の最後ということで少しシリアスな展開が多く、いつもの「このすば」期待すると少し物足りなく思うところはあります。しかしシリーズを通して馬鹿馬鹿しい展開、当意即妙な掛け合い、魅力的なキャラ達の異世界での生活は本当にまぶしく、これでラストと思うと非常に寂しく感じられました。本当にこの作品に出会えてよかったと読了後感じられる作品でした。あとがきでも書かれたスピンオフ案は是非期待したいですね。まだまだ「このすば」愛は冷めそうもありません。